6月6日、第14回読書会を開催しました。5回目となる課題図書形式で、課題図書は『体の贈り物/レベッカ・ブラウン』でした。今回は2名での開催となりました。
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(1)福祉事業において、誰が担当しても同じサービスでないといけないという原則がある。だから、本当はできるしやってあげたいけど、できないことがある。やってしまうと他の人との差が出てしまうし、「あの人は〇〇をしてくれたけど、この人はやってくれない。あの人に来てほしい」という苦情になってしまうから。
(2)医者が患者の容体や生死に心を痛めていたら心身がもたないのと同様、利用者への思いが強すぎるとホームケアワーカー側が壊れてしまいかねない。実際、小説の後半になると〈私〉は疲れを感じ、辞めたいと思うようになっていく。
5月9日、第13回オンライン読書会を開催しました。「私の素」というテーマで、おすすめ本を紹介しあいました。
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アラスカを拠点に世界の僻地を撮影のために訪れ、そこで出会った人や景色が描かれる。たとえば、誰もいない海辺にたった一人で住み、年に一度だけ町に来て一年分の新聞をもらい、それを一日分ずつ読んで暮らす男の話。また、自然礼賛一辺倒ではなく、ニューヨークのような大都会での暮らしも魅力的だという話。そうした数々の記述から、人はどう生きてもいいのだという勇気をもらえる。
社会人になりたてで人とうまく交われないことを悩んでいた頃、今の自分の生き方でいいんだよと、この本が背中を押してくれた。その後、人生の節目ごとに読み返して感慨を新たにする一冊。
ふだん、本を読んで感動することはあまりないのだが、この本はページを繰る手が止まらなかった。何ひとつ思うとおりにいかなくても、人生の一瞬のきらめきが確かに感じられる。ラストで言葉にできない感動を味わい、この一冊で人生が変わった。常に心の中にある、記念すべき一冊。これ以降、読書にはまるきっかけになり、民俗学にも興味を持つようになった。その後、同著者の作品を追っているが、これ以上の作品は出てこない。
その他、読みやすい理系本として、『フィンチの嘴/ジョナサン・ワイナー』も紹介。進化論が現在も続いていることを証明した本。また、『哲学的な何か、あと科学とか/飲茶』も、科学や哲学を易しく面白く紹介した好著。
人類が初めて目にする上空からの景色を見て優越感を抱き、普通の仕事をしている人を見下すような描写も面白い。著者の人間臭さを表すエピソードだが、生きている誇りと紙一重だという気もするし、自分にもそういう面があるかもと思わせる。
飛行機でアフリカに落ちたエピソードでは、水を求めて夜露を燃料タンクに集めて飲み、何度も人が来る幻覚を見る話など、壮絶な遭難の様子が生きていることの貴重さを思わせてくれる。
アフリカで出会ったバークという老人の話も興味深い。奴隷として暮らす彼をサン・テグジュペリが雇い主から買い戻し、さらにお金も与えて故郷に連れて行く。急に有り余るほどの自由とお金を手に入れたバークは、集まってきた子供にお金をすべて与えて無一文になるが、「これでやっと自分の重みを感じられるようになったよ」と彼は笑う。
飛行機乗りの話だけれど、人生についての普遍的な気づきを与えてくれる。「ある人に、思うまま創作活動に専念できるよう食う心配をなくしてやると、彼は眠ってしまう。気前のよい男に金を持たせると、彼は守銭奴になってしまう」「愛するとは互いに顔を見合うことではなく、一緒に同じ方向を見ること」といった、箴言的な文章も面白い。
本作が著者の初めて書いた小説というのは凄いし、才能の残酷さを思わせる。すごい作家がいる、と自分だけのものにしておきたかったが、今はかなりメジャーになってしまい、一抹の寂しさがある。ただ、こちらもその後、同著者の作品を追っているが、これ以上の作品は出てこない。
遠藤作品はキリスト教文学とも呼ばれるが、それほど堅苦しくもない。遠藤周作自身がキリスト教徒でありながらその教義に疑問を抱き、終生その疑問と立ち向かいながら小説を書いた。中でも『哀歌』はその集大成的な作品。キリスト教徒として、人として生きていくにはどうしたらいいのかという答えのようなものが書かれている。
『黄色い人』は、神戸に住む外国人神父が日本人女性と恋愛関係を結び、キリスト教と現代生活のはざまで苦しむ話。キリスト教徒でない人にも、何かの枠をはめさせられた状態で生きていくことの難しさを考えさせる。
『わたしが・棄てた・女』は、悲惨な運命をただ受け入れていく無垢な女性・森田ミツを描く。森田ミツは他の遠藤作品にも何度か登場するが、たとえば『ファーストレディ(上・下)』。主人公の渋谷は政治家となって総理大臣をめざし、彼の友人で弁護士となった辻は、医師である妻とともに充実した生活を送っていた。辻はふとしたきっかけで貧しく不幸な女性・森田ミツと出会い、関係を結ぶ。辻は家庭よりも森田ミツと一緒にいるほうが安らぐ自分に気づく。
こうした遠藤作品は海外の旅行先で読むと心地よい。文章が体になじんでいく気がするし、あとになって「あの国ではあの小説を読んでいたなあ」ということを懐かしく思い出す。
『孤島の鬼』などの江戸川乱歩作品。自分たち世代だと、小学校の図書館には必ず江戸川乱歩の少年探偵団シリーズかホームズシリーズがあり、それらを読んで読書好きになった。『心臓を貫かれて/マイケル・ギルモア』は、アメリカで死刑になった殺人犯を弟の立場から描いたドキュメンタリーで、人間の闇の深さが伺える。『実存主義とはなにか/サルトル』は、人間の生きる目的とは何かという問いに対し、人間に生まれた目的などない、生まれたあとに生きる目的を探し出すことが大切だと解く。講演録なので読みやすくわかりやすい。
4月4日、第12回読書会を開催しました。4回目となる課題図書形式で、課題図書は『目の見えない人は世界をどう見ているのか/伊藤亜紗』でした。初参加の方お一人を含め、合計4名での開催となりました。
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https://nagoyarakusoukai.wordpress.com/
上記にHPがありますが、最近あまり更新されていないようです。HPに連絡先が見つけられませんでしたので、愛知県社会福祉協議会の、紹介ページから抜粋しました。
電話:0586-53-2030/090-7951-4466 (担当:高橋)
http://www.nagoya-ywca.or.jp/fukushi/biguide/bitop.html
お話ししましたように、YWCAの参画団体です。現在は月例会のみで、鑑賞イベントは行なっていません。上記リンク内に、連絡先も記載されていますが、代表者は平川さんという方です。
https://www.facebook.com/voice.cane/
こちらもコロナ禍で、活動はほぼ休止中でした。4月からグループ活動も再開予定ですので、随時、上映が始まりそうで期待しています。
3月7日、第11回オンライン読書会を開催しました。「衝撃」というテーマで、おすすめ本を紹介しあいました。
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二つの話を結びつける方法がぶっとんでいて爆笑できる「フランス人」、排泄物を執拗に描く「専門性」、はねられた生首が自分の胴体について語る驚きの純文学「globarise」(原題ママ)など、短いけれど様々な趣向で楽しめる12編が収録されている。とくに、一見、中国語のように適当に漢字が並んでいる字面を、読むのではなく見ることで話の筋がわかるという仕掛けの「道」! 小説でこんなことができるのかという衝撃を受けた。かなり下品ではあるけれど、あまりのバカバカしさに感動できる一冊。
木下古栗『グローバライズ』試し読み
描き方、表現のしかたが非常にスタイリッシュかつ斬新で、そこにまず衝撃を受ける。とくにコマ割りが独特で、コマの順番が通常どおりでなかったり、見開き全面に大きな鯨の絵が描かれていたり。小説や映画からの引用も多く、とくに著者がファンだと公言するリチャード・ブローティガンの影響が大きい。基本的には人情噺的な“いい話”が多く、感動しながらそれらを読み進めていくと、ラストでこの世界全体の大きな秘密が明かされる。そこが何より衝撃。
白眉は、男性がつじこに、猫がいるよとマンションを指差すシーン。「ほらゆびの先」「わかんないわ」というコマで、指はフォーカスを外してぼやけて描かれている。次のコマで同じく「ほらゆびの先」「わかんないわ」というやりとりをしながら、今度は指だけにフォーカスがあたり、背景はぼやけて描かれる。漫画でなかなかフォーカスという概念は採用されない。この2コマが本当にすごい。著者の高野さんは常に新しいことをやり続け、いろんな漫画家に影響を与えている。
ほかにも、「掃除は私がやりました」という文章であれば、「は」=「を」の代わりだし、、「広島はカキが有名です」なら、「は」=「で」の代わりをしている。異論はあるだろうし国語教育の現場では採用されないだろうけれど、かなり納得させてくれる一冊。
著者の樹村みのりはいわゆる“24年組”の一人で、紹介者さん曰く“加藤登紀子的な人”、つまり学生運動に参加した左翼的な人だった。24年組の漫画家達は作品内で政治色やフェミニズムをさほど強調はしないのに対し、樹村みのりはそれらを割と自覚的に描いている。
この本の紹介のあと、女性がスカートを履くことについて、スカートは女性性の象徴である、男性は女性のスカート姿にこだわりがある、足が見えているところがポイント、などとしばらく語り合いました。
1月10日、第9回オンライン読書会を開催しました。「歴史」というテーマで、おすすめ本を紹介しあいました。
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主人公は高校で歴史を教える教師トム。生徒からは「なぜフランス革命とか昔のことを学ぶ必要があるの?そんな古い話より、いま必要なことを学びたい」と言われる。歴史を学ぶ意味は、過去の過ちから現在の行動を見直すこと。つまり、他の教科は「こういう風にしましょう」ということを学ぶのに、歴史だけは「こういう風にしないようにしましょう」ということを学ぶという皮肉にトムは開き直り、身近な歴史ならば語る意味があるだろう、と自分達の住む町の歴史を語りだす。舞台はフェンズという沼沢地で、町の歴史は水との戦いの歴史でもあった。同時に語られるのは、トムの妻とのこと。二人はかつての幼なじみで、結婚して幸せに暮らしてきたのだが、50歳を過ぎた今になって突然、妻が嬰児誘拐事件を起こしてしまう。トムはその真意を知るべく、妻との歴史をたどりはじめる。こうして町の歴史とトム夫妻の個人史とが折り合わされ、壮大な物語が展開する。
どんな出来事でも、その前後の物語(=歴史)を通じてようやく理解される。たとえばフランス革命がその後の歴史により意味づけられるように。だからトムは歴史を語り続ける。トムの少年時代、川遊びの戯れにウナギを妻の下着に入れた話のあと、ウナギに関する歴史が延々と語られる箇所が素晴らしい。小説を読む醍醐味が詰まった一作。
10年ほど前にリチャード3世の遺骨が見つかったこともあり、興味をそそられる。リチャード3世についてはトマス・モアの評伝が有名だが、トマス・モアはリチャード3世の敵方にあたるため、リチャート3世を悪者として描きがち。いっぽう本書はそうしたバイアスなしで客観的に描かれていく。主人公と警部の友人関係もほのぼのとしていて楽しい。安楽椅子探偵ものとして、分量も短く読みやすい。
タイトルは、「真実は時の娘」ということわざ(真実は時がたたないとわからない、の意)から来ている。読みながら、イギリスの当時の歴史をネットで調べたり高校の教科書で調べて楽しんだ。紹介者さんは大学の時にイギリスの歴史の講義を受け、その先生が勧めてくれたのが本書。学校の勉強では興味がわかなくても、小説から歴史をたどることで面白く学ぶことができ、いろんな方向に興味が広がっていく。
本の紹介のあと、参加者さんの誕生日からその日の絵画を本の中から抜き出して盛り上がりました。紹介されたのは、『システィーナ礼拝堂天井画/ミケランジェロ』『セザンヌ礼賛/モーリス・ドニ』『東方三博士の礼拝/ボッティチェリ』など。
するとここで楽しいハプニングが。紹介者さんが何気なく『塔の中の王子たち/ジョン・エヴァレット・ミレイ』の載ったページを見せて下さったところ、その絵に描かれている二人の王子が実は、前に紹介された『時の娘』のリチャード3世が殺したとされる二人だったのです! 紹介本2冊がきれいに繋がりました!
参加者さんが見たことのある絵については、その体験談も語り合いました。またいろんなところに旅行に行きたいですね~、と話し合いました。
韓国は隣の国なのに、知っていることは少ない。日本と似ているところもあれば全く違うところもある。最たるものの一つが市民革命、市民デモであり、こうしたデモが政治や社会を動かすことがある。ただ、革命成功直後にまたクーデターでひっくり返されたりした経験もあり、韓国人はデモによる栄光と挫折の両方を心に秘めている。市井の人々は、今でもことあるごとにデモに参加するけれども、希望を持ちつつも「こんなことやっても無駄だ」という諦めも感じている。そうした意識は日本人にはないものであり、本書を読むと、小説のできごとを通して韓国に興味が湧く。政治や経済に興味がなくても、文学という入口から入っていくとすんなり頭に入ってくる。
収録されているのは中編が2作で、どちらもラブストーリーと言えるが、その中に上記の歴史がからみ、さらにはフェミニズムや同性愛など、日本人に通じるテーマも入ってくる。2作目の「何も言う必要がない」では、語り手の思索の中で様々な本が紹介され、ブックガイド的な面白みもある。
もともと英語で書かれたものを現代の日本語に訳してあるので、読みやすい。少女漫画『パンと懐剣/神坂智子』の原作にもなった。
著者はかなりお転婆な女性だったらしく、その性格も文章に反映されている。初めてのチューインガムがどういうものか知らず、人からもらって食べるけれどもいつまでも飲み込めない描写も面白い。
太宰治が日記に書いていたほの暗い気持ちから素晴らしい小説を生むなど、同じように辛い思いをしている人がいて、それでも素晴らしい作品を残すことができることを知らされる。「明けない夜もある」(『マクベス/シェイクスピア』のセリフ)、「生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか」(『斜陽/太宰治』)などの言葉が収録されている。
12月6日、第8回読書会を開催しました。3回目となる課題図書形式で、課題図書は『おわりの雪/ユベール・マンガレリ著・田久保麻里訳』でした。今回、初参加のお2人を含め、合計4名での開催となりました。遠方からのご参加もあり、オンラインの特性をまた強く感じました。
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11月1日、第7回オンライン読書会を開催しました。「旅」というテーマで、おすすめ本を紹介しあいました。
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副題にある「風とタンポポの物語り」の〈風〉が椎名氏、〈タンポポ〉が奥様のことを表す。いつもの賑やかエッセイではない、しっとりとした作品に仕上がっている。春名としては椎名氏の著書の中でもいちばん好きな一冊で、本書を読んだあと、1998年にパタゴニアを実際に旅することになる。椎名氏の泊まったホテル、ホテルから海へ続く道、訪れた金物屋など、描かれている場所を一つ一つ訪ね歩き、とても良い旅となった。
佐藤氏の著作では他に、上著で少年を対等に扱う理由がわかる、自身と恩師との交流をつづった『先生と私』、十五歳で初めてヨーロッパへ一人旅した時のエッセイ『十五の夏』、スパイミステリのような醍醐味が味わえる『国家の罠』などもお勧め。
同著者の、野球の試合を見に全国を旅する模様を描いた『野球の国』もお勧め。野球を見て映画を見て帰ってくる、そんな気ままな旅がとても楽しそうで、野球場に行きたくなる。また、『東京物語』は、若者が田舎から初めて東京へ出てきてどう感じたか、著者の体験を交えて描かれる短編集。
犬の旅や冒険を描く小説が多くある一方、珍しく猫の冒険譚となるのが『猫の帰還/ロバート・ウェストール』。一匹の猫がやはり家族と引き離され、そこから旅をする物語。旅先で出会う人たちとのエピソードがとても良くできていて、児童文学だけれど大人が読んでもじゅうぶん楽しめる。
そのほか、絵が好きなので『フェルメール全点踏破の旅/朽木ゆり子』、イタリア旅行の前に読んでとても旅が楽しくなった『すぐわかる作家別ルネサンスの美術/塚本博』『すぐわかるキリスト教絵画の見かた/千足伸行』など。
『声をなくして/永沢光雄』は、有名なルポルタージュ『AV女優』の著者が癌を患い、その闘病中に書かれたエッセイ。癌患者なのに酒を飲み、薬も焼酎であおるダメダメな毎日。貧乏でしょうもない話を綴った『貧困旅行記/つげ義春』と共に、なぜか癒される二冊。そのほか、日本人が各国の様子を紹介した滞在記『スペイン子連れ留学/小西章子』や、『英国貴族と結婚した私/マークス寿子』など。
10月11日、第6回オンライン読書会を開催しました。二回目となる課題図書形式で、課題図書は『灯台守の話/ジャネット・ウィンターソン著・岸本佐知子訳』でした。なんと今回は参加者3名全員が初顔合わせ! 初めての読書会に参加することはあっても、自分の主催する会でこうした状況になるのは初めてでしたので、いつもに増して緊張感を持って臨みました。また、これまでは近隣にお住いの方ばかりでしたが、今回はネットで告知をご覧になり、かなり遠方からのご参加があったことも嬉しいニュースでした。
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9月6日、第5回オンライン読書会を開催しました。「家族」というテーマで、おすすめ本を紹介しあいました。今回は、一冊の本が紹介されるたび、その内容に絡めて次の本が紹介される、という数珠繋ぎの様相になりました。
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ゲイリーの事件を追ったルポルタージュは、先に『死刑執行人の歌/ノーマン・メイラー著 岡枝慎二訳』が出版されているが、こちらは有名ジャーナリストがゲイリーを取材して書いたもの。上下二段600ページほどが二巻という膨大な書物だが、マイケルいわく、「ゲイリーが犯罪を犯す動機や背景が書かれておらず、不十分だし読み物としてつまらない」「資料的な意味合いしかない」とのことで、だから自分で本書を書こうと思い立ったらしい。
二度目の結婚で生まれた子供と渡米し、再婚したアメリカ人と共に暮らす著者。子供達はなかなか適応できずに苦労し、親は無理やり彼らをアメリカに連れてきたことを後悔する。その後、夫の介護をして看取った経験から、あんなに何にもできない人でも、いるのといないのとでは全然違う、と感じることに。死に際して、家族の形がはっきりするということか。
子どもが小学校に上がる年齢になって実の親子ではないと知らされた場合にどうなるのか、という難しい問題が提示される。ずっと家族として過ごしてきたのだから、そのまま育ての親と暮らせばいいのではと思うけれど、ことはそう単純に運ばない。
一念発起でアルバイトを始めた彼女に対し親は、「でもバイトでしょ?」と軽く一蹴する。子供のままでいるほうが両親がかわいがってくれるから、大人になってはいけないと思い、だから男性に性的興味が持てず、レズ風俗に行ってしまう。結局、いろんなことを飛ばしてそういう経験をしてもうまくいかないと気づき、自分の人生を見つめるきっかけになる。
本作の紹介では、親子の距離感が大事というポイントが提示された。考えてみると、悩みのほとんどは親子の問題という気がする。「子供には転ぶ権利がある」の言葉どおり、親はある時点で子供から手を引く必要がある。子供が自分だけでやってみることで成長する。親は、何も手を出さない、何もしないでいてあげるという愛情を示すべきでは。
8月2日に開催した第4回オンライン読書会の模様を、参加者の皆様の同意を得たうえで、ネットで公開しました! とてもいい議論になったと自負しています。
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8月2日、第4回オンライン読書会を開催しました。今回は初の課題図書形式で、課題図書は『最愛の子ども/松浦理英子』でした。一見読みやすいけれど実は凝った作りで、読み込むには手ごわい作品でした。
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7月5日、第3回オンライン読書会を開催しました。参加者は前回と同じメンバー3名でした。テーマは「ミステリ小説」でしたが、皆さん謎解きメインの本格ミステリより、キャラクターやサイドストーリーや文体を楽しまれる傾向が同じで、毛色の違った探偵小説や犯罪小説が紹介されました。
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6月17日、第1回のオンライン映画会を開催しました。参加者は3名で、僕が個人的にお声がけした方が、初めて参加して下さいました。今回も一人一人の発言できる時間が長く、じっくり語り合えたと思います。最後にちょっとだけ、おすすめ本の紹介もできました。
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テーマとしては一応、「この時期にお勧めしたい映画」としてありましたが、そこまで厳しい縛りではなくお気に入りの映画をご紹介いただきました。一人1作ずつをちょうど2周したところで時間切れとなりました。いつも思いますが、2時間ってあっという間ですね。皆さん、僕よりも映画に詳しい強者でしたので、コアな作品がどんどん出てきました。また、紹介された作品を別の方がさらに詳細に語られたりして、大いに盛り上がりました。
映画に関連して参加者の人生が語られるところも面白く、今回は、「ウンタマギルー」という沖縄を舞台にした作品を通じて、「かつて沖縄に住んでいたので思い入れがある」「将来、私も沖縄に住んでみたい」「それでも、人によって合う合わないはある」など、沖縄談義に花が咲きました。
というわけで、初開催の映画会、なかなかいい感じになったと思います。読書会に比べて映画会はあまり開かれていない気がしますが、好きな映画を思いきり語ること、聞いてもらうことはすごく楽しいことだと再認識しました。離れた場所に住んでいる方達がこのサロンを通じて知り合いになれるのも、オンラインならではの魅力だと思います。今後もいろいろと企画は考えており、また近々、募集をおこなう予定です。
・ブラック・クランズマン
・ウンタマギルー
・浮き雲
・ゴーストワールド
・ア・ゴースト・ストーリー
・ウィルソン/ダニエル・クロウズ
・ホテル・アルカディア/石川宗生
・霧に橋を架ける/キジ・ジョンスン
6月7日、第2回のオンライン読書会を開催しました。参加者は3名で、SNSの告知をご覧になった方が初めて参加して下さいました。少人数ゆえに、一人一人の発言できる時間が長く、十全に語り合えた気がします。
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テーマとしては一応、「コロナを克服しつつある今、読んでほしい本」としてありましたが、そこまで厳しくこだわることなく、好きな本や印象に残った本をご紹介いただきました。選書や本の内容ばかりではなく、コロナによる自宅待機時の本の「読み方」という提示がありました。一冊をなるべくゆっくり読むため、本の中で歴史的な出来事の記載があったら、副読本の歴史書をひもとく、という方法で、とても楽しくて有意義な読み方だと感心しました。
また、話の流れでシャーウッド・アンダーソンという作家の話が出たあと、この作家がらみの本が紹介されたりして、みなさんレベルが高い、と感心しました。僕はシャーウッド・アンダーソンをただ一冊、以前に参加した読書会の課題本として読んだだけでしたが……。
本のジャンルとして、小説よりノンフィクションが多かったのも印象的でした。今回もとても楽しく過ごすことができ、2時間があっという間でした。参加者の方からも良い反応がもらえて、嬉しく思っています。そしてこの読書会を通じて、本好きの輪が広がっていくのも嬉しいですし、やりがいを感じています。
・記憶する体/伊藤亜紗
・目の見えない人は世界をどう見ているのか
/伊藤亜紗
・どもる体/伊藤亜紗
・みんな彗星を見ていた/星野博美
・転がる香港に苔は生えない/星野博美
・新 よくでる一問一答 世界史/小豆畑和之
・聖なるズー/濱野ちひろ
・本物の読書家/乗代雄介
5月17日、オンラインSALONの第2回として、第1回アナログゲーム会を開催しました! 参加者は前回の読書会のメンバーのうち3人、僕を入れて4人での開催となりました。友人同士でのゲームは何度もやったことはありますが、ゲーム会として開催するのは初めて、もちろんオンラインでも初の試みでした。プレイしたゲームと雑感は、下記のとおりです。
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回答はメモに書いていただき、それを順番にカメラに見せてもらいました。そこから2番目の数値を出すところでやや手間取りましたが、これはリアルのゲーム会でやっても同じように手間取るところなので、良しとします。
このゲームのキモは、人との思考のずれ具合や、ある物事への関心の強弱を面白く観察することです。「そんな多くないよ~!」とか、「なんでそんなに少ないの?」など、驚くことしきり。それから、どんなお題が飛び出すかもお楽しみの一つで、今回、「私が髪を洗うとき、抜ける髪は何本?」というお題が心に強く残りました。
15枚のカードは、各自でトランプをご用意いただき、スペードの「1」~「K」の13枚に、ハートの「4」と「5」をそれぞれ「14」と「15」に見立てて使いました。トランプが手元にない方は、適当なメモ用紙を15枚用意していただき、そこに「1」~「15」の数値を書いてもらいました。今回、これらが混じっていてわかりにくかったのが反省点であり、メモに数値を書いて見せあう方法に統一したほうがわかりやすかったと感じました。
山札2枚ほどで練習し、本番に移ります。皆さん、すぐにコツをつかまれたようで、策略を練ってカードを出していきます。と、ゲーム中盤でトラブルが発生。最初の2枚の練習のあと、本当は手札を元に戻すはずだったのが、戻していない人もいたことが発覚しました。これは、しっかり僕が確認しなかったのが原因です。このあたりがオンラインの特徴で、リアルでゲームをしていたら自然と全体が見渡せるのですぐにわかるのですが、手元が見えないネット環境だとそこが不明瞭になってしまいました。
結局、もう一度はじめからやり直し、ということになりました。やはり面白いのは、最高値のカードを出したら他の人とバッティングして山札が取れなかった、というところで、今回もその場面が何度かありました。また、マイナス値のカードについては、一番小さい数のカードを出した人が取る、というルールもあって、マイナスカードはできれば取りたくないから大きめの数字のカードを出したい、でも大きな数字のカードは残しておきたい、というジレンマにかられます。シンプルで奥深い、やはりこれは名作ゲームだと再認識しました。
僕は妻と二人、ドライブ中に問題を出し合ってよく遊んでいました。ただ、慣れないと質問の仕方が難しく、今回も質問が出てこずに膠着してしまう場面がありました。あまりにも答えが出ないようなら、ヒントを出すか、最終的には答えを示そうかと考えていましたが、無言でも頭の中でいろいろと考えている方もいらっしゃるので、気長に待つことにしました。結局、時間ぎりぎりくらいで回答が出たので、僕としてもほっとしました。途中でいくつか、重要な分岐点となる質問がなされ、そこから真相へ近づいていくのも面白かったです。ただ、問題内容によって面白さにかなりばらつきがあるので、問題カードのチョイスも難しいところです。また、人の死を面白がるようなところに拒否反応を示す方がいるかもしれない、とも感じました。
5月3日、記念すべき第1回のオンライン読書会を開催しました。参加者は5名で、いずれも以前のリアル読書会でご一緒した方々でした。事前に何度もテストを重ね、主催者としてはかなりドキドキのスタートでしたが、大きな問題や混乱もなく、楽しく過ごすことができました。
テーマとしては「この時期に読みたい本」としてありましたが、それほどタイトに考えず、好きな本を紹介して頂くつもりでした。それでも実際お話をお聞きしてみると、なんらかの形で現状につながる内容の本が紹介されており、その意味でも貴重な時間になったと感じています。
映像や音声の質は問題ないレベルでしたし、発言のぶつかりも思ったほど気になりませんでした。ただ、マイクの位置が近すぎると息遣いさえも拾ってしまうため、適度に口からマイクを離したほうがよい場合もあることがわかりました。
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・ドゥームズデイ・ブック
/コニー・ウィリス
・犬は勘定に入れません
/コニー・ウィリス
・ブラックアウト/コニー・ウィリス
・オール・クリア/コニー・ウィリス
・ペスト大流行 ヨーロッパ中世の崩壊
/村上陽一郎
・モモ/ミヒャエル・エンデ
・死んでも床にモノを置かない。
/須藤昌子
・横道世之介/吉田修一
・冬の犬/アリステア・マクラウド
・はてしない物語/ミヒャエル・エンデ
・堆塵館 /エドワード・ケアリー
・戦場のコックたち/深緑野分
・自分の中に毒を持て/岡本太郎
・旅をする木/星野道夫
・去年の雪/江國香織
・流浪の月/凪良ゆう